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初めてのバースデイケーキ

 母の95歳の誕生日を、近所の方たちが数人で、お祝いをしてくれました。サプライズでしたが、当人はちゃんと年齢の自覚があり、思いがけないひとときを、喜こび合いました。春らしい色の花束やアレンジメントを胸に、バースデイケーキを前に、来年の年賀状用にと、写真を撮りました。
 そして、ケーキにたてた9と5の数字ろうそくに火をつけ、ピアノ伴奏付きで歌を歌い、さあ、火を消してと言ったのですが、母はどうしていいのかわかりません。母は子ども時代を戦中戦後の混乱の中で過ごしたせいもあって、我が家には誕生日にケーキを囲むという習慣がありませんでした。そんなわけで、母には95歳にして初めてのバースデイケーキだったのです。
 さあ、ろうそくの火を吹いて! と、みんなで急かしましたら、母は片手であおり、「仏壇じゃないんだから」と無神経な娘の一言で、みんなで大笑いしました。真冬の午後、小春日和の誕生会でした。

               りすママ
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その人の言葉

 年末に上京した折、実家のご近所の婦人とばったり会って、互いの無事と健康を喜び合いました。彼女はたぶん80歳くらい、独り暮らしですが、庭先に様々な植物を育て、折々に切り花をご近所に分けてくださる方です。70代半ばまで、女子大の寮母をされていたと聞いていました。
 短い立ち話の別れ際に、「お宅の○○〇は、大正13年のお生まれだった?」と、きかれたのですが、その○○〇が、うまく聞きとれず、「うちの?」と聞き返しますと、「ミセスは、15年でしたか?」と言われたので、ああ、うちの父のことを、ミスターと呼ばれたのだとわかって、可笑しくなりました。「うちの父は、大正3年生まれでした」と答えますと、「まあ、そうでしたか。うちの主人は大正13年でした」と言われて、まるで昭和初期の小説に登場する会話のように感じました。
 思いがけない〈ミスター〉〈ミセス〉という呼び名は、おそらく彼女の暮らしに根づいた独特の言葉なのでしょうが、その意外性がいやみなく、じつに自然だったのが、心に残りました。
 ミスターなどと呼ばれたことのない父は今ごろ、笑っているでしょうが、それにしても、世間の言い回しではなく、その人だけの意外な言葉づかいに、ついつい笑顔になる再会でした。

           りすママ

この寒風の中

 長年、わたしたちは店の冬眠中であった1月10日辺りから2週間くらい、恒例のバックパッカー旅をしていました。ヨルダンのペトラとか、ウズベキスタンのフェルガナ、モロッコとか、隠岐の島とか、よりによって真冬の一番寒い時に出かけるわたしたちが、いかに珍種だったか! こうして家の中にいると、なお一層よくわかります。
 旅の間は、たしかに寒く、野の花や鳥のさえずりには遭遇しませんでしたが、寒くていやだなとは全く感じませんでした。凍りついた旧ソ連の旧市街を、朝から夕暮れまで歩きつづけていたのが、まるで前世だったように思い出されます。
 ペトラの大遺跡では、歩いても歩いてもその広大な虹色の岩肌がとぎれることなく、ほんの小さな現代人たちを寡黙にしました。隠岐の島では、大空の下、だれもいない断崖絶壁の上に放牧された牛たちのわずかな動きに、見とれました。
 そして、旅を終えて山中湖にもどり、あらためて真冬の冷たさに気づき、思わず笑ってしまうほどでした。凝りもせず、また翌冬の旅の行先を考えるのも、また真冬の楽しみでもありました。
 寒さというのは、つくづく相対的な感覚だと、今はコタツに足をつっこんで地図を眺めながら、そう思っています。このところずっと、寒くて冷たいです。

               りすママ

なつかしい野鳥たち

 毎冬、富士桜の花芽をついばみにくるウソという胸がサーモンピンクの野鳥を、加古坂神社境内で見かけました。全国の梅園や桜園からは害鳥呼ばわりされて追われる野鳥のようですが、山麓では大歓迎です。
 その後、我が家のベランダで、久々のゴジュウカラとメジロに再会。メジロは、以前子ヘビがヤマガラの孵化したばかりのヒナをねらったときに、加勢にやって来た混群の中で見かけて、「あら、メジロさん、森にはちゃんといたのね」とおどろきましたが、どうやら普段は人の目の届かない森の奥で暮らして、いざ出番という時だけ現れるようです。ウグイスよりずっと色がきれいで、それに、やはり桜の花芽が大好きです。新年早々、なつかしい野鳥たちに出会えて、こいつは春から〇〇〇がいいわい!
               りすママ
          

大晦日のノックアウト

 この村ではいつのころからか、大晦日に小学生(保育園生や中学生は該当外)が半紙に書いた習字を身内や近所に配って、1000円札をもらい、それが事実上のお年玉という習慣があります。もちろん、うちの息子たちも何枚も書いて、知り合いの家に配って自分たちの小遣いにさせてもらった記憶があります。
 そのお習字は、どこの家でも神棚か床の間に縦に吊るされ、どんど焼きまでの二週間、年始客の言いたい放題の評を浴び、酒の肴になるというわけです。おとなりには小学生がひとりと、その身内にひとりいるだけなので、去年まで、我が家には2枚の半紙が吊る下がっていたのですが、今年は小学生がもうひとり増えて3枚になりました。習字が2枚とえんぴつの詩が1枚、なかなかいいものです。
 わたしは青空の下、思い切って外に出ました。親が運転して習字を配る車の後部座席に座った子どもたちの声が、窓越しに聞こえました。面識のない子どもたちの、単なる通行人を見る無邪気な声です。「あっ、おばあちゃんが出てきたよ」。もちろん、間違いではないのですが、予期せぬノックアウトは、2020年の締めくくりにふさわしい大パンチで、笑えるまでかなり時間がかかりました。
            りすママ
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