山頂もまた交差点

 念願の長者ヶ岳に登山した日、天候が良かったにもかかわらず、苦労してたどりついた山頂での眺望は、今ひとつでした。目の前の富士山は雲に隠れ、ふもとの田貫湖も霞んで、山頂特有の開放感には恵まれませんでした。
 でも、山頂でお弁当を広げますと、ときおりクマよけの鈴の音がして、そのうち登山者が汗をふきふき現れ、それぞれがお弁当を広げます。驚いたことに、中高年の単独登山者が多く、男性や女性がそれぞれひとりずつ、静かに昼食タイムというわけです。
 長者ヶ岳の山頂は、天子ヶ岳、毛無山、小田貫湿原、そして休暇村の四箇所からの登山道が交差する頂点ですので、四方からの登山客には、それぞれに登山情報があり、どこどこの斜面はきついとか、下山道はどこがおすすめとか、話し声も交差します。
 中には、きれいにむいた冷梨をおすそわけして回るおじさんもいたりして、思いがけずごちそうになりました。いったいどなたがむいて、持たせてくれたのでしょう? 留守宅の様子まで、目に浮かびそうです。
 脇目もふらず、寡黙に通り過ぎる女性登山客もいますし、しばしおしゃべりを楽しむ二人連れもいます。小一時間の山頂滞在で、のべ10人の登山客がわたしたちの前を通り過ぎ、「じゃあ、お元気で」と、見送り、見送られたわけですが、まるで峠の茶店をはったかのような余韻がありました。
 山頂で交差した人々は、今はそれぞれの下界で、次の山を目指して日常をこなしているかもしれません。そしてまた、どこかの山頂で、ふとすれ違うのでしょう。
 
 今月のごはん会は、9月23日(日)夕方の6時半からですので、前日までにお電話ください。ごはん会もまた、小さな交差点のひとつ。ぜひ、四方から登っていらしてください。

                   りすママ
 
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森の目レンズ

 今夏の50日間、ほぼ毎日視界20メートル内の暮らしをしていました。時おり買い物に出かける以外は、毎日同じ日課をこなし、朝から晩まで、ずっと同じ森を見ていたことになります。
 50日ぶりに自宅をはなれ、静岡県の田貫湖畔で、いつもとは異なる富士山をながめてまいりました。高い空に広がる筋雲、大沢崩れの南麓、そして長者ヶ岳登山と、晩夏と初秋のすき間を充分に楽しんで帰宅。
「ただいま」のあと、さっそく、いつもの森のウロにムーちゃんを探そうと目をこらしましたが、うまくピントが合いません。あれっ? おかしいなあ、ウロがぼやけて見えます。双眼鏡で、のぞいてみましたが、やはりピントが合いません。ウロもそうですが、周りの木々の葉も、なんだか滲んで見えるのです。ムササビがいるのか、いないのか? いると思えばいるようですし、いないと思えばいないようで、いつものように、はっきり確認ができないまま陽が暮れてしまいました。日没後に、ウロからの座布団滑空がなかったので、ムーちゃんの不在がわかりました。それにしても、急に視力が衰えて、いたく気落ちしてしまいました。
 そして翌朝、すぐに窓を開け、再び森をながめました。いつもの森と、いつものウロ、そしていつもの木々で安心しました。リスは、クルミを地面に埋めるのに余念がありませんし、ヤマガラは順番待ちで水浴びにやってきます。ああ、よかった! やっとピントが合いました。ウロには、ムササビの不在が、はっきり確認できます。
 たった二日間、別の風景にひたっただけで、知らず知らずに馴染んでいた自分の森の目レンズが、歪んでしまったようです。そして再び、視界20メートル内の暮らしにもどり、レンズの度数が元にもどってくれたのです。
 人それぞれに、異なる視力があるのは知っていましたが、その視力がうまく発揮できる、それぞれの対象物があるのを、初めて知りました。ちなみに、わたしの目は、近場の木々の色や、リスの動き、真っ暗なウロの中をのぞくための専用レンズのようです。ひと夏の、思いがけない体験でした。

                         りすママ
 
 
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