りすの巣

 7月上旬、うちの敷地の高い木が、電線にさわっているというので、関電工さんが総勢七名で木の伐採に来てくれました。クレーン車、ダンプ二台の重々しい伐採工事は、実に手際よく、無言で着々とすすんでいきます。数台のチェーンソーが奏でる伐採の暴音がつづく中、檜が一本、中途で切り落とされました。この春、りすが懸命に皮をはぎ、樹上に巣をつくっていた木ですので、巣が落とされるのはわかっていました。
 はたして、作業開始後20分ほどで、りすの巣らしき固まりが落ちて、わたしは駆け寄りました。細い檜の皮でくるまれた、ふわふわの見事な巣です。「ねえ、見て、りすがつくった、総檜づくりの巣よ、ほら、見て」
 関電工の七名の職人達は、もくもくと、脇目もふらずに伐採をつづけています。だれひとり、りすの巣にも、さわいでいるおばさんにも、目をやる職人はいまません。
 あげくに、「奥さん、危ないから、近よらないでください」と、わたしは家の中に隔離されてしまいました。
 そうですよねえ。彼らは伐採が仕事ですから、りすの巣などに、目をやっていたら、仕事にならないのです。一日に、何軒かの伐採をこなさないと、明るいうちに家に帰れない身なのですから、こんなおばさんにかまけていたら、たいへんです。
 そのうち、七名は無事に、次の仕事に移動していきました。
 ほんとうに、ごくろうさまです。
 ところが、へんなおばさんに同情した棟梁が、落ちたりすの巣を、そっと玄関に置いていってくれました。
 あれから二ヶ月、檜の樹上から落ちたりすの巣は、ずっと店の玄関脇に置いてあります。外側は荒く、内側は細かく、檜の皮はうまく使い分けられ、うなるほどの出来栄えです。
 おばさんは、「ほら見て」と、自慢げにお客さんに説明するときもあるし、知らん顔して何日もすぎることもあります。
 でも、りすの巣は、猛暑も台風も、ひょうひょうとやり過ごし、満月の晩も、無関心を装おいつつ、今もずっと、主(りす)のいないまま、店をはっていてくれます。
 無愛想ですが、存在感のある店番です。

                      りすママ
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9月のごはん会

 台風シーズン到来なので、はたしてうまく催行できるかわかりませんが、チャリティごはん会を、9月16日(祭月)と29日(日)に予定しております。どちらも、夕方6時半にはじめますので、前日までにお申し込みください。

     りすママ
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