春のにぎわい

 約80日ぶりに店を開けました。その日は、朝からムササビが帰巣していたり、カケスが低空飛行していたりと、森もにぎやかですが、圧巻はヤドリギにとまったキレンジャクの団体さん。シベリヤから木の実をもとめて南下してくる冬鳥で、そのふわふわの胸元と品のいい色が、彼らのプライドそのものといった感じです。
 ヤドリギの種は粘質性があり、キレンジャクのフンに交じって、樹皮上に張り付くと、そこで発芽して樹皮に向けて根を下ろし、子孫を増やしていきます。つまり、パラサイトではなく、共存共栄していると聞きます。真冬の木々の間に見つける、いくつもの球体植物、それがヤドリギで、山中湖畔にもかなりの数があるので、ヤドリギ・ツアーもおすすめです。
 そして夜は、大相撲の大詰め取り組み。ここでも、白鳳や鶴竜など、鳥たちの化身が大活躍して、ハラハラさせられどおしです。さらに、その15分後、ムササビが出巣して、樹上の葉を食べ始めました。地上には雪があるので、すぐには滑空せずに、まずは樹上で腹ごしらえするようです。
 こうして、開店初日がすぎました。4月13日まで開催中の、仲間展のチャーミングな各作品にも励まされます。店の内外とも、春のにぎやかさに恵まれました。
 大雪直後の、あの静まり返った真っ白な世界を思い出しながら、あのとき、今ここに見えたり聞こえたり、香ったりするこの春は、どこで、なにをしていたのだろうと、つい考えてしまいます。
 少なくとも、自分自身の春は、内在していたというより、いきなりどこからかやってきて、完全にのっていけないわたしに、呆れているようですが。

                      りすママ
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記録に接するとき

東京大空襲から、69年目になろうとしています。10万人もの犠牲者があったにもかかわらず、なぜかほとんど世界に知られることがなく、つい最近になって、やっと声が大になり、語られること、つづられること、展示される機会が増えました。海外の方は、「えっ? 東京にも空襲があったのですか?」と、おどろかれたりしますので、その度にこちらもおどろきます。
 じっさい、体験者である祖父母の口から、わたしでさえ直接耳にしたことはありません。祖父母はだれも、口数が少なく、喜怒哀楽もあまり表さなかったように、今になって思い出しますが、辛いこと、哀しいこと、理不尽なことは、あえて、つとめて、戦後生まれの孫たちには語らなかったのかもしれません。
 昔の写真を見て、「昔は、世の中に色がなかったんだね」と無邪気に問う幼児たちに、ギョッとさせられますが、広島、長崎の原爆、東京大空鵜の大部分の記録写真はモノクロです。モノクロは、芸術としてはかえって想像力を引き出す力をもつ反面、現実感に乏しいのはたしかです。
 最近、モノクロの記録写真を見て、そこに燃える火の色、血の色、肌の色、黒焦げの色、川の色、逃げ惑う人々の声、軍用機の音、そうしたものが感じられるようになりました。いつの世も、かけがえのない人々の暮らし、営みがあって、それを突然奪い取っていくものが、自然災害、人的災害、戦争であるのを、3・11を境に、わたしたちも篤と胸に刻んだからだと思います。
 ファンタジーに接して、実はそこにも暗い底があるよ、とは言えないまでも、一枚の記録写真をなかなか手放せない季節、それが特にこの3月だろうと思います。


                     りすママ
 
 あみん恒例の仲間展に、ぜひご出品ください。展示のみで販売はしませんが、プロ以外の手づくり作品を3月22日から4月13日まで、当店にて展示させてもらいます。
 搬入は3月21日まで、名札をつけて玄関(365日開いています)内に置いてくださっても、郵送でもかまいません。一人一品をお預かりします。

車線ちがえば

 東京都内で利用する車線は、たいてい決まっています。田園都市線、東横線、日比谷線、京王線、あとはバス。ほとんどの車線で目にするのは、携帯の画面とにらめっこしている乗客たち。一度は、座席に腰をおろした八人中、なんと七人が携帯片手に忙しそうで、ご時世かなあとため息でした。
 ところが、先日、小田急線に乗りました。時間帯は午後二時前後。たしかに、乗客の年齢はほとんどが中高年以上でしたが、半数以上が読書をしていて、携帯にかまけているのは、一割ほど。おどろきました! 車線ちがえば、なんとやら、客層もちがい、暮らし方もちがうのが、よくわかりました。みなさん、実に楽しそうに読書をしています。同じ車内のこちらまで、自ずと頬がゆるみます。
 はたして、小田急線沿線に、どういう人々が、どういう暮らし方をしているのか、具体的にはわかりませんが、小田急線の車窓風景が明るく、車内の雰囲気が静かで、読書に向いた環境なのだと思いました。
 こういう楽しい発見があると、都内の移動もまんざら退屈ではありません。乗客の行動ウオッチング! 観察している側が、案外ぎゃくに観察されたりして、それもまた、愉快ではありませんか!
 
                    りすママ
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