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ばば抜きのババ

 トランプでばば抜きをするとき、〈ババ〉が回ってきたときの、あの正直、決まりの悪い、カッコ悪い瞬間は、おそらくだれにでも身におぼえがあると思います。招かざる客をどうしたらいいのか? なかなかポーカーフェイスにはなれません。
 実はわたし、昨秋の11月に〈ババ〉が回ってきて、約3か月間手放すことができず、ほんとうに困っていました。保留しておくわけにもいかず、さりとて次の人に手渡したら、ぜったいに物議をかもし出すのが目に見えていたからです。「あら、珍しいものがあったわねえ」とか「まだ存在していたのね」とか「やだあ! なにこれ?」と言われるのは、ちっともお洒落じゃないし、実は、隣村の和尚さんから引いちゃったんですと、わざわざ言い訳するのも癪だし、しばしの経済談義になるのも疲れるし、さりげなく無言でもらってくれる人はいないだろうかと、ずっと抱えていて、ついに年を越してしまいました。ポ-カーフェイスは2分が限度です。
 このまま、たぶんずっとお子守をしなくちゃいけないのかとあきらめていたころ、たまたま背に腹が替えられなくなり、ついに財布から取り出した2000円札一枚。ぐずぐず、もじもじ・・・・ぐずぐずの挙句・・・・大好きな天然酵母のパンやさんが、なんのコメントもなく、レジにさっと入れて、釣銭をくださいました!
 ああ、よかった! 決して偽札ではないのに、駅の自販機にも、銀行のATMでも使えないそのお札は、わたしにとってまさに大ババでした! 
 そのパンやさんは、わたしの実家の東京目黒にある、ほんとうに小さなパンやさんで、もう数年以上そこでお店をはっている、なかなかの筋金入りで、なのに若くてとってもやさしい奥さんが、店番をしています。おそらくわたしには予測がついていたのかもしれません。この奥さんならきっと、無言でこのお札を受けとってくれるだろうなって。的中でした! なんだか体中が軽くなったみたいな爽快感で店を出ました。ほんとうに、ありがとう!
 でも帰り際に、ふと思いました。あの2000円札を、うちの店のレジで出された隣村の和尚さんは、いったいどんな気もちで、あのお札を出されたのか???って。そう思ったら、パンやさんの若い奥さんは今ごろ、あのババに気落ちしているだろうなって!
だから、あのババを再び引かないように、つまりあの店でぜったいにお釣り銭をもらわないように気をつけなくてはいけない。わたしは、そう思っています。ポーカーフェイスの出番は、実はこれからだったというわけです。ごめんね、目黒のパンやさん〈Mサイズ〉の奥さん。
それにしても、このばば抜きって、いったいいつ?、どこで? 終わるのかしらね?

                       りすママ
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生き物の美しさ

 うちの森に住むリスは、エゾリスといって、冬眠はしません。今朝も、森のはじからはじまでを、横断していたのですが、その姿の美しさといったら、まるで動物番組のアフリカ編で見られるような、ヒョウやゼブラの走りに似ていました。体が軽いせいか、それとも跳躍力がすぐれているせいか、雪に足跡がつかないくらい素早く次の脚が前に出るようです。それで、体を精一杯長くのばして、ぴょんぴょんでもないし、すたすたでもない、なんとも小気味いい走りで、駆け抜けて行ったのです。わずか数秒でしたが、クルミにまつわるりす特有の滑稽さとか、しぐさの可愛さとはまったく別の、野性味のある美しさにおどろきました。
 真っ白な雪の世界に現れるヤマガラやシジュウカラ、ゴジュウカラたちの羽の色も、いつもよりずっと鮮明に見えます。
 生き物たちが、人間の暮らしからまったく離れた場所で、人知れず生き延びているのに気づいたとき、思わず声を出すのもためらわれるほど、神妙な気もちにさせられます。たまたまそこに現れた郵便配達の人に、書き留ですから印鑑をと言われ、極力足音と声を抑えて印鑑を差しだしましたら、いたく怪訝な顔をされ、はっと我に返った次第です。
 雪もまた、まるで生き物のように凍結したり、陽に輝いたりして、さまざまに姿を変え、そのうち車のエンジン音や鳥の鳴き声を吸収して、あたりを静寂につつみます。憎いくらいの美しい演出をしてくれるので、雪の日は、だれもが無意識にも、寡黙になります。

 次回のごはん会は、3月12日(土)昼の12時からです。前日までにお申し込みください。

                   りすママ
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