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沢辺の劇場

 山麓探偵団では、年に一度の一泊を企画しています。それもシュラフで野宿、タープはありますが、テントはありません。
約10年ぶりに参加しましたら、いきなり沢歩きから始まり、滑りやすく、また座りの悪い沢石に足を乗せると足元がぐらついて、身が縮んでしまいました。しかし、もどるわけにも、待機するわけにもいかず、とにかく必死でみんなの後をついていくしかありません。重いザックを背負っての沢登りは、大胆すぎても、慎重すぎても転びそうで、ほんと、「どうして、参加しちゃったんだろう?」と無駄な自問につぶされそうでした。
 二十曲峠奥にある渓谷には、ふだんは林業に携わる人しか足を踏み入れない、静かで美しい渓流が流れています。堰堤(えんてい)を4つ越えれば、沢辺にチェックインできるとかなんとか、気安めを言われるも、最初の堰堤越えでは、仲間に手を引っ張ってもらったり、腰をあげてもらったりで、その先にある3つの堰堤のことなど、考える余裕はありませんでした。
 しかし、なんとかやっと目的地について、薪集め、タープ張りなどをしてから火を囲み、夕食の支度に腰を下ろしました。10人で焼き肉、みそ汁、ご飯、漬物などを食して、寝そべる者、唄う者、楽器を奏でる者、絵を描く者といろいろで、最長老であるわたしは、早々にシュラフにもぐりこみました。
 しかしその後、マスターに起こされてふと火の方を見ると、数人のシルエットが中央で踊る炎を囲み、タープの天井には巨大な影が異様に揺れて、歌声などがかすかに聞こえるではありませんか。
 真っ暗な闇の中で垣間見たその光景は、まるでホモサピエンスのドキュメンタリーのようでした。タープの外では雨も降りだしましたが、それもまた音楽のようで、思いがけない舞台に、ますます引き込まれました。
 翌朝、仲間のひとりに、「火を発見した人間は、炎よりずっと以前から踊っていたはずよね」とききますと、彼女は「そういうことになるね」とうなずきました。

               りすママ
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