wanted !

  近くのリゾートマンションにいらしたSさん、「昨夕、ベランダにたぬきが来たの」
「えっ? マンションにたぬき?」
「そう、7階なのに。それが、とっても可愛い顔のたぬきでねえ」
 うちのマスターがピンときて、すかさず心当たりの写真集をお見せすると、まさにwantedよろしく、「そうそう、この顔、この子にまちがいないわ」
「Sさん、それはたぬきじゃなくて、ムササビですよ」
「ムササビ!」
 かくして、二ヶ月前にうちのウロから遊びに出たまま帰らないムーちゃんの行方が、わかったというわけです。
しばらくのムササビ談義のあと、Sさんの帰り際にわたしは一言お声かけをしました。
「Sさん、もし今晩もムーちゃんがおたくのベランダにおりてきたら、あみんのウロに帰るように言ってくださいね」
 律儀なSさんは、わたしの伝言を忘れなかったのです。なぜなら、その4日後の今朝、なんと二ヶ月ぶりに、ムーちゃんがウロに帰っているではありませんか!
「ムーちゃんが帰ってきた、帰ってきましたよお」8月6日の早朝、うちはオリンピックの観戦以上に、わきたっていたはずです。
 そして、双眼鏡でのぞいたり、映像を撮ったりと、大忙し。
 ところが・・・・どうやら、二ヶ月前にいた子とは、大きさも顔つきも異なる、別の個体だということがわかりました。
 それでも、ムササビにはちがいありません。Sさん、伝言役をほんとうにありがとう!
 そして、もっと素敵なハプニングがあり、ウロにもう一匹の小さいムササビが、見え隠れしているのです。「わー、二匹もいる。もしかして親子かも」
 わたしは、ほぼ一日中双眼鏡で観察をつづけました。親と思える大きい個体が小さい個体の毛づくろいをしたり、なめたり、横になって授乳しているような格好をします。さっそくねらってきた小ヘビのウロ侵入もうまく防ぎ、親の鋭い爪を見たのか、小ヘビは早々に撤退していきました。
 そして、日没15分後の午後7時ジャスト、一匹はひらりと滑空しました。まだ幼くて滑空できない子どもは、やはりウロに残ったのを、わたしたちは確認しました。真っ暗なウロの中で、二つの小さな目が光ります。
 夜のとばりが、木々のシルエットを徐々に塗りつぶしていきます。
 はて???・・・・あの子はまだ滑空できないのですから、よそから移動してきたとは、考えられません。ということは、今朝このウロで生まれたのかしら? 
 ということは、あの親は臨月のお腹で、今朝ここにとんで来たのかしら?
 ということは、授乳期間が終わるまで、親は当分このウロに毎朝帰ってくるということかしら? 
 先のことはまだわかりませんが、あの親のムササビは、今この闇の中で滑空と木登りをくりかえしながら木の葉や花芽を採り、母乳と産後の養生のために必死ですし、ウロの中では、子どもがたった一匹で留守番をしています。
 わたしは、その二匹のムササビの夜をじっとかかえて、自分の夜を過ごそうとしています。
 なんて、豊かな闇でしょう。

                      りすママ
 

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