上下巻のいきさつ

 店の合間の読書には、重すぎず、長すぎず、難しすぎずの3条件を満たす本を選ぶことにしています。店をはっている以上、お客さんがみえたとき、自分の頭が物語の中にどっぷりつかっているわけにはいかないからです。登場人物がさっと隠れて、店のモードにすぐに切り替わるには、それなりの選書力が要されます。
 それで、避暑にきている母といっしょに村の図書館に足を運びました。20分くらいのあいだに、たがいに数冊選んで、借りることにしました。静かな図書館の中は、まるで本の森みたいだとは、うまく言い当てたものです。さまざまな種類の無数の木々の間を歩き、森林浴まで楽しみながら、本を手にとってカウンターに向かいます。
 わたしは、ねらった本が下巻しかないので、仕方なく他の本を選びました。
 母も、数冊選んで、借りたようです。
 そして、帰宅してそれぞれの本をバッグから取り出しましたら、なんと、わたしが借りたかった本の上巻を、母が借りているではありませんか! こんな偶然あるでしょうか、そしてわずかな確率をこえて借り出された、大きな森の中の細い木一本に、じっさい、おどろきました。
 ところが、次の瞬間、そのおどろきは、すぐに笑いにかわりました。なぜって、その書名が、自分たち母子の大好物に関わっているからです。「うどん」が書名にあるので、食いしん坊で昼食前だったわたしたちは、その本に手がのびるのはいわば当然で、高い確率だと気づいたからです。
 あれから三週間、わたしはすでに上下巻を読み終わりました。ときどき、自分がはっているのが、喫茶店なのか、うどん屋なのか、混乱するほど面白い読書でした。
 コーヒーの香りに浸かりながらも、かつおぶしの香りにさそわれて読書するなんて、思いもよらぬ粋で、ぜいたくな三週間でした。
 さて、ところで、うどん屋をはる人は、店の合間にどんな本を読むのか? これは、うどん屋の物語を読んだ限り、店の合間には、ねぎを刻んだり、しょうがをすったり、読書どころではないことが、よくわかりました。

 うどん屋以外の商いの合間に読む本   重松清著「峠うどん物語」上下巻 おすすめです。

            りすママ
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