不思議の森のアリスたち

 映像カメラマンの伊藤浩美氏を団長に、13名で青木ヶ原樹海を歩いてきました。17年前に山麓探偵団をはじめて以来、何度も歩いてきた樹海ですが、一度として同じコースはありません。今回も、神座風穴、蒲鉾風穴、横型溶岩樹型など、人知れず奥に鎮座する洞穴周辺、時には道なき道のカラ松やホウ葉を踏みつつ歩き、たいへん気持ちのよい一日でした。
 最近の多雨で、溶岩上には多種多様のコケがみずみずしく広がり、そのミクロの世界には、思わずだれもが引きこまれてしまいます。ルーペで覗いてみると、コケの集合は実はなだらかで、美しい森だということがわかります。どこまでもつづくその森は、ルーペを外すと、今度は溶岩を覆うビロードの絨毯と化します。
 背を伸ばし、馬酔木(あせび)、鬼しばり、フデリンドウ、ハリギリ、五葉松(ごようまつ)などの植物を愛で、三十三歳(ミソサザイ)やコゲラの鳴き声に耳をすませます。
 腰が痛い、膝が痛いなどと言い合っていた13人には、それぞれとっておきの話があって、例えばヒメネズミがね、何度もベランダを横切ってエサを運んでいたとか、リスがちゃっかり鳥の古巣を食堂にしてたとか、ヤマネが布団の中で冬眠していたとか、テンはなぜあんな石の上の真中にフンをするのだろうね? とか、あはは、いや、それはさあ、あら、いやだ、あはは、などとだんだん皆は年齢を忘れ、通路式の洞穴をくぐって、ふと消えたりする人、思わぬ場所からひょこり現れる人もいて、まるで不思議の森のアリスたちのように、それぞれの時間を越えていきます。
 平安時代後期に、数年間にわたって寄生火山の噴火がつづき、その間ずっと溶岩が流れ、また数年間かかって溶岩が冷え、陥没を繰り返した後、100年間に堆積する土はわずか1センチという厳しい環境の中で育った奇跡の森、それが青木ヶ原樹海です。根をはるにも土のない溶岩に、必死にからみついて生き延びてきた樹木と灌木の、まさに命みなぎる森、樹海に行くたびそう思います。
 そして夕方に帰宅してから、ひとりでムササビの出巣と滑空を見届け、この世の時計の針に、いったい何を約束したらいいのか? と考えたりもしています。

                    りすママ
 
 
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