さまざまな緑色

一月中旬から約2週間、マスターと冬季の旅をしてきました。20年ぶりのイスラエル、そして国境を越えてヨルダンにまで足をのばし、ナバティア人遺跡のペトラに三泊、ひたすら古代の道のりを歩きました。
 イスラエル南部やヨルダンの砂漠地帯では、アカシア、オリーブなどが砂地でもたくましく育ち、オアシスではナツメヤシ、イチジク、イナゴマメなどの大木が、心地よい緑陰をつくっています。
 テルアビブ市内の街路樹も、年季のある大木が多く、木陰のベンチではお年寄りの車椅子や赤ちゃんのベビーカーが、昼下がりをまどろみ、街の景観をなごませています。わたしたちも、旅の緊張からしばし解きほぐされるひとときでした。
 中近東の緑色が、砂漠の砂をかぶり、とげとげした葉先をもち、あるいは亜熱帯植物の分厚い葉であれ、やはりそこには緑の風がふき、人々は深呼吸しにやってくるようです。
 空に向かって潔くのびるのは、レバノン杉の独特の形と濃い緑色。
 そして、旅を終え、一面の銀世界を期待して山中湖にもどってみると、残念ながら積雪はありませんでした。落葉松、杉、ミズキなどの木々が、いつものようにテラスの向こうで、枝をはっています。
 ヤマガラ、シジュウカラ、ゴジュウカラたちが、人影を見つけたのか、にぎやかにテラスに飛来してきます。「やあ、実はね、ちょっと出かけていました」
 地理的には、さまざまな緑色を目にして地球を半周してもどってきた自分たちも、46億年という地球の歴史にはなんの痕跡も遺しませんでした。
 地球上に森が現れたのが5億5000年前といいますから、緑色の歴史はまだまだ浅く、ましてや人間の出現もつい最近なので、膨大な地球の時間からすると、今回の移動はまったくの微細、微小にすぎません。
 ただ、内面にわずかに蓄えられた16日間の思い出は、しみじみと滲みでて、不思議な味がします。どうやら数値や数量には測れない味? そうだといいな、と願っています。
         
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